ドリーム小説


記憶を辿って170 頼むから俺から逃げないでくれ










いたいいたいいたい


くるしいくるしいくるしい


ぼろぼろと、かぶっていた嘘があふれるみたいに


この感情が痛いこの思いが苦しい。


なあ、はやく、はやくはやくはやく!


助けてよ、作兵衛



俺に向けられる視線に色はない

まるでそこらへんにある小石を見るように、なんの思いも含ませず俺を見る。

それならば怒ってくれたほうがいいのに
ののしってくれた方が安心するのに


だって、その視線の意味は



俺を認識しない、無関心



ぞっと、する


俺を見てよ、作兵衛

俺の名前を呼んでよ

俺は作がいないと、望む道など見つけられないんだ!


ガラス玉みたいなその瞳。

何の感情もない色

俺を呼ばないその口

その口が、ゆるり、開かれて











「誰だ?おめえ。」


体中から力が抜けていく感覚


「俺はおめえなんかしらねえ。」


ゆっくりとはずされる視線。


まって、まって、っまてよ!作!


「気安く俺を呼ぶんじゃねえよ」





「っ、作兵衛!!!!」


思わず叫んだ名前。

伸ばした手

それは誰に捕まれることもなく___


「どうした?三之助。」


否、その手はあったかい何かに包まれた。


「さ、もん・・・?」

かちりかちり、瞳を瞬かせて、今の状況把握に意識を費やす。

目の前に広がる青が、その場所が外であることを示して。

目の前にかぱりと口をあけて、脳天期な表情を見せる左門の姿があって。


そこに、作兵衛の姿はなくて。



「・・・ゆ、め・・・?」


「ん?今は現実だ!さっきまで三之助は夢の中にいたがな!」

ぽつり、無意識にこぼした言葉に左門が律儀に反応を返してくれる。

にかり、太陽みたいにまぶしい笑顔が、俺の不安であふれていた心を柔らかく溶かす。

「・・・左門」

握られたままの手をぶらぶらと動かして、腹筋を使って起きあがる。

「なんだ!」

同じようにてをぶらぶらと仕返しながら左門が問う。


「作にあいたい。」

「僕もだ!」

ぼとり

それはひどく重い感情。

「でも、怖い」

「僕も怖いぞ」

「作が俺を見てくれないのが辛い」

「それは辛いな」

「作が俺のこと呼んでくれ二のが苦しい」

「それも苦しいな」

「作に嫌いって言われたら俺泣く。」

「それは僕もなくぞ。」


ぼとぼととあふれるそれを左門があっけらかんと切り捨てていく。

曖昧に夢が混雑して

世界が混じるように色が変化する。


「だから、左門」

「なんだ、三之助」


あいたいあいたいあいたい、でも


「作にあうの、もうちょい待って。」

「もちろんだ」


俺の心が落ち着くまでは




お願いだから、作兵衛




俺から逃げないで





































back/ next
戻る