ドリーム小説


記憶を辿って185 視線を外されないことがどんなに幸せか
















「っ、おめえらっ、ばっかやろおおおおお!!」




伸ばされた手が、僕に触れる





「なんで、なんでっ、」




張り裂けそうなほど込められた感情に僕の心が不協和音を醸し出す





「いっつもいっつも、おめえらが迷子になった時は、俺が見つけてやってるだろうがっ!!」




頬を流れていく涙が僕の感情を揺さぶる





「なんっで、おめえら、おれをさっさとみつけにこねえんだよ!!」




零れていくだけの想いが僕の全てを支配して






「三之助と左門の、ばっかやろおおおおおおおおお!!!!」






呼ばれた名前に今までこらえていたものが決壊した。





















「さ、くべぇ」



小さく小さくもらした声は、思ったよりも簡単にその場所に響いて。


ぼろぼろと涙を流しながら僕と三之助を抱きしめていた作が小さくこちらに視線を向ける。


まっすぐに、僕を見る。

決して目線をそらさない。


それが、どんなに、嬉しいことか。




「っ、左門!?」



僕の顔を見て、ぎょっとした表情をして。

慌てて僕から離れてあわあわと焦る。

先ほどまでの涙も驚きのせいで止まったのだろう。

まだ赤く潤む瞳が右往左往。

三之助はそんな作の後ろで苦笑してるし。



僕の目からは馬鹿みたいにぼろぼろぼろぼろ涙が出るし。



端の方で僕たちを見ていた田村先輩がぎょっとして平先輩に突っかかってる。


「っ、なんで泣いてんだ!?」


天パリ具合がおそらくピークに達したのか。

頭を抱えて、目をぐるぐる。

僕の首元の服をつかんで前後にがくんがくん。


いたいいたい。


「ちょ、作兵衛!ストップストップ!」


そんな僕を見かねて制止をかけてくれたのは、後ろの方で見守っていた孫兵。

孫兵が作の手を離してくれて、藤内がぐわんぐわんしてる僕を支えてくれて。


「ちょ、孫兵!なんで左門ないてんだよ!」


どこからどうみても、作が思いだしたことが原因だろうに、混乱している作は大変面白い。

今度は孫兵をがくがくと揺さぶっている。

ぼっとぼと相変わらず零れるだけの涙。

それを見てはあわあわと慌てる作。

ちなみに三之助はその後ろで大爆笑始めやがった。


「さくべえ。」


泣いたせいで舌ったらず。

鼻声で聞き取りにくい。

それでも名前を呼ぶ。


「な、なんだ、左門。」

恐る恐るこちらをうかがう作。



「さくべえ」

「お、おう・・・」

「さくべえ」

「なんだ・・・」

「さくべえ」


「・・・なんだ。」


名前を呼んで、返事があって、それが、こんなにも、嬉しいと、

嬉しいのに涙は止まらなくて。

何度も何度も名前を呼びながら泣く僕を、作はとうとう呆れたように見て、


そしてふにゃり、珍しく優しく笑った。



「ごめんな、左門。遅くなって。」


いつもいつも迷子になるばかりの僕を、迎えに来て見つけて、説教のあとの、



見つけるのが遅くなってごめんと、


あの時の謝る顔のまま、




僕を見て。



ぼとぼとと相も変わらず零れる涙。


それを止める方法なんかわからない。


けど、作兵衛が、三之助が、孫兵が、藤内が、・・・ここにいないけど数馬がわらってくれるなら、



「泣くか笑うか、どっちかにしろよ。」


三之助の言葉が柔らかく響いた。





















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