ドリーム小説


記憶を辿って187 箱庭の崩壊

















共に生きることを許されなかったあの時代。


自ら近づくことなどできず、あの世界でただ、生きる方法を必死で学んだ。



あの小さな小さな箱庭で、

先輩に愛されて

同級に励まされて

後輩に頼られて

先生方に生きるすべを教えていただいて


とてもとても温かいあの場所で


たった一つ、手を伸ばすことを許されなかった存在たち。


私たち女は、いずれ男性には勝てなくなる。

力ではもちろん、いろんなことで、負けてしまう。

そうなる前に、早く早く、彼らが小さなうちに私たちへの恐怖を与えましょうと


気になる相手も好いた相手も、この手で遠ざけて、傷つけて。


そうやって、心を閉ざす訓練を。


柔らかなはずの箱庭はそれでもやはり、忍びを育てる場所で。


ゆっくりゆっくりと、心を殺す準備を。


あの場所で、仲の良かった彼らがいつか刃を向け合う相手になると、わかっているし、理解もしていた。


それでも、わかっていても、理解していても、心はとても正直で。



触れ合うことの許されなかったその関係。


共に生きることを望むことなどできなかったあの時代


名前を呼ぶどころか、その名前を知ることすら、むつかしかったあの場所。




この手で奪った数多くの命。


自分の身を守るために傷つけたたくさんのもの。


泣くことを、情を入れることを許されなかった、あの世界。








逃げたくて逃げたくて、それすら許されなかったあの時代



最後に、体から流れゆく命が尽きるほんの少し前に、



願ったのはたった一つのこと。




次は、どうかどうか、彼らが争うことのない時代となっていますように。

どうかどうか、彼らが最後まで共に生きることができる世界でありますように。



薄れる意識の中、望むのはそんな世界。




そして、もしも許されるならば






次は彼らとともに生きてみたい

























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