ドリーム小説






記憶を辿って  銀色の君














「富松君、ごめん付き合ってもらっちゃって。」

「いいよ、どうせ時間あったし。」



ちょうどいいところに!

そう言って担任から渡されたのは書類の束。

しかもそこに書いてあるのは中学二年生宛て。

「・・・ええと、これ二年って書いてあるんですが・・・」

「ああ、二年三組の教室に運んどいてくれ。頼んだぞ。」

そんなあっさりとしたやり取りでの休み時間はつぶされたのだった。

。何してんだ?」

廊下で茫然と去っていく担任を見ていればかけられた声。

見ればくるりとした前髪をかきあげながら近づいてくる作兵衛。

「・・・手伝ってやるよ。」

膨大な量の資料を抱え立ち尽くすを見て作兵衛は仕方がなさそうにそう言った。







「・・・本当に手伝ってくれてありがとう。じゃないと私たどり着けてない・・・」

「だろうな。」

作兵衛が苦笑しながらそう返す。

転校してきてから日が浅いにとって二年生の教室など未知の世界だ。

作兵衛がついてきてくれなければ全力でたどり着けなかったであろう。

「これ何処の教室だ?」

「3組って聞いたよ。」

学年を示す色違いのネクタイは、この場所では異色に見える。

その証拠に道行くたびに何事かと向けられる視線。

「・・・これだから他学年に行くの苦手なんだよ。」

はあ、というため息と同時にこぼされた言葉に今度はが苦笑いする。

「あ、ここだよ。」

二年三組、と記されたクラスの前にたどり着き、プリントを支えながらドアに手をかけた。

瞬間。

「っ!」

「わ!?」

横にスライドさせようとしたドアはの力ではないものによって開け放たれて。

同時に開けた視界で銀色がちかり、光る。

体に走った正面からの衝撃に驚き体勢を崩す。

それによって支えていたプリントが崩れ、地面へと散乱して。


「!ご、ごめんなさい!」

「大丈夫か?」

ちょうど後ろに立っていた作兵衛によってぎりぎりでこけずに済んだだったが、いま起こったことに理解が追いつかず茫然としていた。


きらり光った銀色は柔らかそうな髪質なのにあっちこっちにはねていて。

おっきな目を困惑でいっぱいに染め、小動物のようにを下からのぞきこんだ。

そのしぐさは可愛らしい彼にとても似合っていて。

?」

何も声を発しないに怪訝そうな作兵衛の声。

「大丈夫ですか??」

「、大丈夫、だよ。こっちこそごめんね?」

ますます焦ったように声を出した彼の声にようやっとも声を発することもできて。

取り繕った笑みでそう返す。

「よかった。」

ほっとしてもらした笑みはふにゃりこちらの心まであったかくするもので。

「プリント落としちゃってごめんなさい。拾いますね。」

そう言って地面に散らばった白い紙に手をかけた。

「あれ?これ、僕等のクラスのですね。」

その用紙の内容を見てきょとり首をかしげる。

「先輩たちが運んできてくれたんですか?」

「頼まれてな。」

同じように紙を集めてくれていた作兵衛がそう答える。

「ありがとうございます。」

へにゃ、と笑う彼。

なんとも可愛らしい。

「教卓の上においときゃいいか?」

「はい。」

「あ、私も手伝う。」

二人のやり取りを見ていただったが慌てて散らばったプリントを拾うために動き出す。

と、

「先輩に、しかも女性にそんなまねさせられませんよ。」

しゃがもうとしたをやんわりと押しとどめる手と言葉。

ふわり、先ほどよりもずっと大人びた彼がを止めて。

「でも、落としたの私___」

、ほらもう終わるからじっとしてろ。」

作兵衛からもそう言われれば、にできることはもうなくて。

「・・・ありがとう。」



「ちょっと、のいてくれません?」

不意に後ろから聞こえてきた声に慌てて振り向けば無すりとした表情の少年。

緑がかった髪が印象的なそのこにごめん、と返せばちらり一瞥を向けられただけで視線をそらされた。

「時友、遅い。ご飯食べるよ。」

むすりとした表情のまま彼はそれだけ告げて教室から出て行く。

「まってよ、池田君!あ、先輩たちありがとうございました!僕は時友四郎兵衛です!」

では、そう言って慌てて池田とよばれた少年を追って走って行った。




嵐のように起こったそれらをぽかん、と眺めていればいつの間にか横には戻ってきていた作兵衛がいて。

何処となく不機嫌そうな顔をしていたのに驚きは声をかけた。


「俺あいつ嫌いなんだよ。池田、とかいうやつ。」


むすりとした顔のままそう述べる。

「別によく知らないんだけどな」

その横顔は複雑そうで、困惑の色が強くて。

何も言うことができずに去って行った二人の背中を見続けた。




きっとあなたは記憶のどこかで覚えているの


















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