ドリーム小説









記憶を辿って21   だあいすき


















お昼を三郎次たちから誘われた。

違うクラスだというのにそうやって誘ってくれるのは嬉しくて、一も二もなく了承した。

授業が終わってさあ、三郎次たちのところに向かおうと扉に手をかけ開けた瞬間、開けた視界の先、一人の女の子。

驚いたように姿勢を崩して、同時に手に持っていの他のであろう白いプリントたちが散乱する。

手を伸ばして支えようとする前に彼女はその後ろに立っていた男子生徒に助けられて。

「!ご、ごめんなさい!」

「大丈夫か?」

慌ててあげた声に返事はなくて、ただ僕を見て茫然とした表情の女の子。


ふわり


記憶が湧き上がる。

桃色装束に身を包んで、たおやかな花のように微笑んでいた彼女。

その後ろ、彼女を支えるように立つ少年は、三郎次が常に突っかかっていた先輩で。

?」

それが彼女の名前なのだろう。

反応を返してくれない彼女に焦ってもう一度声をかける。

「大丈夫ですか??」

「、大丈夫、だよ。こっちこそごめんね?」

慌ててあげられた声。

取り繕われた笑み。

感じた違和感はそんなことないと一蹴して。

「よかった。」

ほっとしてもらした笑みに彼女の眼も優しくなって。

「プリント落としちゃってごめんなさい。拾いますね。」

彼女が落としたプリントたちに手をかける。

それには僕のクラス名が入っていて。

「あれ?これ、僕らのクラスのですね。」

あれれ、と首を傾げる。

「先輩たちが運んできてくれたんですか?」

「頼まれてな。」

帰ってきた返事は幾度となく聞いた声。

「ありがとうございます。」

その声を久しぶりに聞いたことが、嬉しい。

その姿を見れたことが、嬉しい。

「教卓の上においときゃいいか?」

「はい。」

「あ、私も手伝う。」

僕と富松先輩のやり取りを見て慌てて動き出した彼女。

その手にそっと触れて、顔を見る。

「先輩に、しかも女性にそんなまねさせられませんよ。」

にっこり、笑って告げれば、ぽかんとした表情。

可愛らしい人だなあ、と思う。

「でも、落としたの私__」

、ほらもう終わるからじっとしてろ。」

富松先輩の言葉にしぶしぶ、けれどふわり笑って。

「・・・ありがとう。」


















「時友!」

ぼおっとしながら口に食事を運んでいれば呼ばれた名前。。

でも、それはなんだか違和感を感じるものであって。

「おい、時友!聞いているのか?!」

「・・・あ、僕か。ごめんね、なあに?」

「まったく・・・」

はあ、とため息をつく三郎次。

んん、ごめんね。

だって、三郎次からその呼び方されるのは慣れなくて。

みんな、みいんな、僕のことを苗字で呼ぶんだ。

少し悲しいな、とは思うけど、また出会えたから、それでいい。

ふにゃり、笑えば仕方がないなというふうに苦笑して。

ふふふ、昔と変わんないそんな皆が好き。

「何笑ってんのさ。」

「いつものことだろう?」

左近と久作が呆れたように言葉を交わす。


あのね、あのね



たとえ何も覚えてなくても、僕のことを名前で呼んでくれなくても、それでも



それでも



ぼくはみんながだあいすき。





















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