ドリーム小説






記憶を辿って28  きっと知ってる














何かが変わったわけじゃない

何かがわかったわけじゃない


でも、あの子に会って、あきらめないで探し続けてと言われて、


そうして見つけた。


どこかちがう、クラスメイト。


別に今まで意識もしなかった彼。

でも、そのしぐさ一つ一つ、見たことがある気がして、記憶が揺さぶられて。

それはどうして?


わからないけど、わかりたいと思ったんだ。




「浦風君。」

別にどうってことない休み時間。

いつも人に囲まれてる浦風君が一人でいた。

だから、話しかけた。

それだけ。

「・・・ええと、三反田数馬だっけ?」

一瞬出てこなかったであろう僕の名前。

クラスメイトだけでなく時折親戚にも忘れられるのに。

それでも君はなぜか見つけてくれて。

「何?」

別に僕だって用事があったわけじゃなくて。

ただ、話しかけて、そして__


そして?


「ええ、と、」


なんで話しかけたの?

何の用があったの?

何もない

でも、話しかけたいと、話しかけなきゃと。


「三反田?」


その呼び方が、心に突き刺さる。


なんで、そう呼ぶの?


前はもっと、もっと___


ま、え・・・?


「三反田?」

「数馬、だよ、」

気づいたら言葉は口から勝手に零れていて。


「僕のことは数馬って呼んでほしいな。」


一瞬眉をひそめて、不思議そうな、怪訝そうな顔。

「・・・数馬?」

その呼び方が、耳になじむ。

胸があったかくなる。


「うん。ありがとう。」


微かに目の前が歪む。

ほとり

一粒溢れた涙が、頬を伝う。


「え、な!?」


「三反田。」


驚いている浦風。

その姿が目の前から消える。

否、何かによって遮られて。


ぐい、とまわされた腕。

それが僕の視界をふさいで。


「会話邪魔して悪いな、浦風。ちょっとこいつに用があるから連れてくな。」

「え、ああ・・・ええと、伊賀崎、だったっけ。」

「ああ。一組の伊賀崎孫兵だ。」


視界が遮られたことによって涙が際限なく溢れだして。

それを止めることもできず、ただ、二人の会話を聞くだけで。



「行くぞ、三反田。」


そう言って連れ出された人気のない中庭。

どうしてだろう。

僕は伊賀崎君と話をするのは初めてなのに、懐かしい、なんて感じるなんて。


「何泣いてるのか知らないが、あんな風にいきなり泣いたら浦風が泣かせたみたいにみえたぞ。」

そんなんじゃないよ。

でも、自分でもなんで泣いたかわかんないんだ。

「三反田?」

ちがう、


ちがうよ


ぐい、と涙をぬぐって彼の顔をまっすぐとみる。

首に巻いた赤いマフラーがなんだかほほえましく思えた。


「数馬って呼んでよ孫兵。」


ポロリこぼれたその言葉にどこか迷うように孫兵は頷いた。










思い出したわけじゃないけれど、可笑しいことは感じたから


























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