ドリーム小説





記憶を辿って31  伸ばした手は未だ届かずに











なんていうか、もう少し、もう少しな気がするんだ。

たぶんもうちょっとでそれに手が届く。


でもまだ、パズルのピースがはまらないみたいにぽっかり、何かが足りなくて。




さまよう視線

まどう心

探す誰か


見つからない焦燥







「・・・次屋?」

何をするでもなく、ただぼおっと窓の外を見ていた。

違うクラスだけれど時折話す伊賀崎が怪訝そうに俺を覗き込んできて。

「ん?伊賀崎、なんだ?」

そのまっすぐな切れ目な目を見返す。

綺麗な顔なのに、眉をひそめてため息。

「それは僕のセリフだ。さっきから僕が話しているのを聞かず、ぼおっとして・・・どうかしたのか?」

それにようやっと自分が先ほどから伊賀崎の言葉を無視していたことに気がつく。

「・・・なんか、さ」

別に話そうと思ったわけでもない。

ただ、不意に言いたくなっただけ。

俺の話を聞いて、こいつがどんな反応をするのか気になっただけ。


「だれか、足りねえ気がすんだよ・・・」

「・・・だれか?」


ゆっくりと、俺の言葉をかみしめるみたいにそっと言葉を漏らした伊賀崎。


「そう、だれか。俺にとって大事で大事で、どうしようもないくらいに一緒にいたい。そんななにかが、書けてる気がする。」




無意識に、辺りを見回して。

その姿がないことに落胆するくらいには。

でも、それが誰だとか、なにだとか、そう言うことは全くなくて。



「なんか、どこにあんだろうな・・・」



見つけたいものが何か見つけたいのに、それが何か見つからない。


何も言わなくなった伊賀崎に目を向ければ、なぜか戸惑ったような表情。


「・・・どうかしたか?伊賀崎。」

「・・・それは、ずっと前から・・・?」


射抜くような鋭い瞳。


それは迷いもすべて押し込めるように。


「と、いうかに会ってから、だな。」





その存在が、俺の存在に影響をもたらした。


足りない何かを示すように。

そのそばにいれば何かが思い出せるようなそんな気がして。



ぞくり、



背筋が冷えた。


ゆっくりと横を見れば、何も映し出さぬ瞳がそこにあって。

綺麗に整った顔がとても冷たかった。



「伊賀崎・・・?」

「ああ、なんでもないよ、ごめん、次屋。用事思い出したから僕戻るね。」



そういって教室を出て行った伊賀崎があまりにも静かすぎで怖いと、感じた。























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