ドリーム小説
記憶を辿って34 僕を映すのは彼女だけでいいのに
かたり
音を立てたことに、君は僕を見上げた。
その瞳に映る色に、虫唾が走る。
「い、がさき、くん・・・?」
ポツリつぶやかれた僕の名前。
いらり、いらだちが募る
「どうし、」
「あきらめた方がいいと僕は思うよ」
言葉を遮って、その目を見つめ、言う。
ふるり、震えた瞳が一瞬で意味を悟るのを知る。
「本当はわかってるだろ?なのに、なんで?」
「ど、して・・・」
口がわななく。
その口からこぼれる言葉は、何の意味も持たぬもので。
どうして?
そんなこと君が聞くの?
その答えを知りたいの?
わかってるくせに
「余計なこと、しないで。」
自分が 『ひとごろし』 だった記憶なんて、いらない。
ああ、
今無性に、じゅんこにあいたい
あの赤く美しいあの子に
綺麗な黒硝子に僕を映して離さないでいてほしい。
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