ドリーム小説





記憶を辿って35  ぐるりぐるり


















「なあ、


始めて会った時と変わらぬ笑みを浮かべながら、左門は口を開いた


「お前のせいで」


時折見せてくれるようになった三之助の軽い笑みが、いまは逆に恐ろしくて


「僕たちは思い出しちゃったんだよ」


ふわりふわり、いつもはこちらの心をいやしてくれていた数馬が、ただ冷たい瞳でこちらを見ていて


「なんでこの記憶を思い出させたんだよ!」

藤内が烈火のごとく叫ぶ


「こんな記憶いらない」


ただ、作兵衛の言葉が胸に強く突き刺さった。


「だから言っただろう?」


何も言葉を紡げないに後ろから掛かる声。


赤い彼女を愛しげになでながら。


「いらないことを、するなと」


鋭い視線は、ただ、を射抜いた。





















はっと、目を開けて、映った天井に安堵する。

そして、先ほどまでのことが夢であったということにほっとして。


ああ、目が回る

彼の言葉が頭の中をぐるぐると廻る。

きっと彼が望んでいるのは本当で、

に対して抱く思いは嫌悪。



以前からずっと、彼はあのメンバーの中で一人一歩下がったところからみんなを眺めていて。

それは別に中には入れないとかそんなのではなくて、ただ、その距離が彼にとって居心地がよかったのだろう。

迷子になる二人我関せずと眺めていて。

それなのに、保護者の彼に頼まれれば仕方がないなと一緒に探し出して。


クラスは違ったけれども、彼らと共にいる時間がとても楽しそうで。


優秀と言われたい組の中でも特に頭がよかったと聞く。

それでも、その力をおごることなく、周りを広く見ていて。

首元に常にいた彼女を最愛の人と称して

だけども、時折

とても

冷徹で

冷静で

その手をくだす



が知っている伊賀崎孫兵は、そんな人だった。


波風立てずにいられるのならば、かれは変化を望まない。



彼のまっすぐの鋭いまなざしが、ひどく胸を突く。






思い出してほしいと、は望む

いらぬことをするなと、孫兵は言い放つ



それはどちらが正解ではなく

どちらも不正解でない





ふらりふらり、



心が揺れる。

























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