ドリーム小説
記憶を辿って37 触れた手から広がる熱
「・・・鉢屋先輩・・?」
その影はどことなく見知ったもの。
けれどもその表情は覇気がなくどちらかといえばすさんで見えて。
そして何よりも、いつもそばにいるはずのあの人がいなかった。
ずっとずっと、胸の中くすぶる想い
ずっとずっと、頭の中まとまらない考え
だからこそ、不用意にあんな言葉を放ってしまった
「不破、せんぱい、」
その姿を見つけて思わず声をあげれば振り向いた彼。
ふわり
髪を浮かせて何かようかな、と首をかしげた。
「今、鉢屋先輩、が__」
そこまで言って、気づいた。
彼の瞳が困惑を持ってを見つめていることに。
「ええ、と、鉢屋って、あの?」
重い重い鉛を飲み込んだみたいに胸の中に広がる息ぐるしさ。
ぐっと、強く手を握り締めて
「ごめんなさい、人違い、でした、」
こらえきれなかった雫をひとつ、その場に残しては走り出した
知っていたのに、
わかっていたのに。
彼らも覚えていないかもしれないと
でも、心の奥で望んでいてしまったんだ
あの二人であれば何があっても離れはしないと
ごめんなさい、
ごめんなさい
ごめんなさい
走って走って、たぶんこの時代に生を受けてから始めてこんなに全力で走った気がする。
周りの景色など目にはいらず、ただ走った。
のに
ぱしりと掴まれた腕
つんのめるからだ
広がる温もり
「見つけた」
そんな優しい言葉は卑怯だ
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