ドリーム小説
記憶を辿って39 見つけた
「どうしたの?不破、竹谷。」
兵助と二人、昼ごはんのために学食に行ってきた途中。
困惑の表情で廊下の先を見つめる雷蔵と八を見つけて何の気なしに声をかけた。
それに振り向いた不破はさらにへちょりと眉をしかめた。
「どうしよう、尾浜、久々知、僕女の子泣かしちゃった・・・」
困ったように笑いながら八も口にした。
「しかも下級生だったな。」
隣のクラスで顔見知り程度だったけれど彼らはそんなこと気にせず答えてくれた。
「・・・は?」
そのままの表情を保ったまま首をかしげて雷蔵はつづけた
呆けに取られている俺の横から兵助が言葉を発した。
「何やったんだ?」
冷静なその言葉に微かに瞬時したような後そっと言葉を続ける。
「よく、わかんないんだけどね・・・鉢屋、って名前がでたんだけど・・・」
どくん
大きく胸が高鳴った
「鉢屋って、あの入学式以来姿が見えない?」
「うん、たぶんそうだと」
「しかもなんか雷蔵のことも知ってるみたいに話してた。」
「不破、竹谷。その子何処に行った?」
「え?この廊下を走って行ったけど・・・」
どくん高鳴る胸を押さえこむようにして不破の言葉を遮る。
慌てて帰ったきた声を背にすぐさまそのさされた方向に走り出した。
「え、ちょ、勘右衛門?」
「ごめん、兵助、またあとで」
止める兵助の声よりも、いま自分を動かす衝動に勝てはしない。
「見つけた」
あのときみたいに早くはないけれど、今の自分の精一杯で走って。
そうして捕まえた君は、いつか見たことのある君だった
「お、はま、先輩・・・?」
「久しぶり、くのいち教室の子だよな?」
警戒を解くように柔らかく笑って見せればゆるり震えた瞳から大粒の雫が溢れだした。
「ごめん、なさっ、」
謝って謝って。そうして俺から距離を取ろうとする君をそっと、けれど引き離せないほどの強さでつかみ続ける。
「どうして謝るの?」
腕で顔を隠しながら幾度も幾度も言葉を落とす君に問えばふるふると頭を振って拒否を示す。
「雷蔵が三郎を覚えてないのは二人の問題。君が心痛めることはないんだよ?」
そう言っても君は顔を覆ったまま。
さてどうしようか。
同級生に見つかったら後輩泣かせ、さらには女を泣かせたといらぬうわさが飛び交うだろう。
「おもい、ださせるの、は、いけない、こと、ですか」
嗚咽に交ってこぼれた言葉は思いもしないもの。
少し驚きその先を促すように黙れば続く言葉は深く俺の心をえぐった。
「いまなら、できるから、」
「あのころ、できなかったこと、いましかできないこと、があるの!」
「いま、ならわたしはあの人たち、と一緒に生きれる、」
ぐい、と目元を乱暴にぬぐって。
そうしてあげられた顔。
赤く潤む瞳
その中に潜む強き意志
「それをのぞむのはいけないの?」
ぐっと、まるで俺の奥深くを覗き込むように。
彼女の瞳は僕をとらえた。
俺は何を迷っていたのだろう
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