ドリーム小説





記憶を辿って40 ごめんなさい












「お、はま、先輩・・・?」

見つけた、と腕をつかんだ手があまりにも温かくて、今まで我慢していたものが一気にあふれた。

「久しぶり、くのいち教室の子だよな?」

を落ち着かせるように、記憶の中と変わらぬ表情で笑う。

その笑みが、優しくて、懐かしくて

溢れだした涙は止まることなく滴り落ちる。


『いらないことをしないで』


「ごめん、なさっ、」

孫兵の言葉が頭に浮かぶ。

同じことを言われてしまえば、きっともう以前のように立ち上がることはできない。

掴まれた腕から離れるように距離を取ろうとするけれど、勘右衛門の強い力がそれを許してはくれなくて。

「どうして謝るの?」

聞かれた問に答える余裕なんかなくて、ただ溢れる嗚咽をこらえるのに必死で。

ごめんなさい

ごめんなさい

「雷蔵が三郎を覚えていないのは二人の問題。君が心痛めることはないんだよ」

言ってることを理解はできても、それがの中に響くことはなくて

けれども、けども


またあの人たちが共にいるのを見たいのです。



「おもい、ださせるの、は、いけない、こと、ですか」


嗚咽をこらえながら発した言葉。

それは誰かに問いたくて問いたくて、仕方がなかった言葉。

そっと優しく背をさすられて、言葉が続いていく。



「いまなら、できるから、」


今はあの時と違うの


「あのころ、できなかったこと、いましかできないこと、があるの!」


あの時では傍に行くことなどできなかった。



「いま、ならわたしはあの人たち、と一緒に生きれる、」


今なら、共に歩んで行ける



ぐい、と目元を乱暴にぬぐって。

そうしてあげた顔。


滲む視界に映るのは、大きく目を開いた勘右衛門。

その瞳に映る自分の姿。

それはとても弱くて、幼くて、それでも、負けたくないと思った。





「それをのぞむのはいけないの?」













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