ドリーム小説
記憶を辿って42 もう少しだけ、まって
” 一緒に頑張ろう ”
その言葉はの胸に優しくしみ込んだ。
その言葉はの不安を少しだけ軽くして。
その言葉はの世界を肯定した。
孫兵に言われた言葉はいまだにぐるぐると頭をめぐっている。
彼の言葉はわかる
それでも、譲れないものがにもあって。
まだ、面と向かっていい返せはしないけれど、それでもの心は再び固まりだした。
ぎゅう
まわされて腕は白くきれいなのに、たくましく。
ふわり顔にかかる髪質は綺麗なのに少し短くて。
温もりは、体中に広がるけれど
「・・・重い、です・・・」
の小さな背ではそれをささえられず。
「、わ、」
言ったにもかかわらずさらに体重をかけてくるものだから、ぐえ、と潰れた蛙のような声をあげて机に突っ伏す。
「あやべ、せんぱ、・・・」
苦しいと訴えても返事はなく、ただ、すねたようにに縋りつく。
「滝のばか。」
ぽつりつぶやかれた言葉。
「三木のあほ。」
言葉はひどいけれど覇気はなく。
「タカ丸さんのおたんこなす。」
まるで泣きだしそうで。
それに腕を優しく叩くことでしかには返せない。
けれどもとても可愛らしい人だと感じた。
「失礼します。」
がらり、会いていた前の扉から入って来る音。
何の気なしに向けた視点の先。
どくん、と胸が鳴った。
「、と う な い ・・・?」
耳元で囁くだけの声。
それはもちろん黒板前で届けものを教卓に置く彼に聞こえるはずはなく。
ふらり、動き出そうとした喜八郎。
一瞬見送ろうとしてしまったそれを、
がちり、腕を掴んで止めた。
後ろから感じたのは紛れもない殺気。
その方向には紛れもない彼。
”一緒に頑張ろう”
その言葉に勇気をもらったけれど、まだ彼と向き合えるほど強くはなれなくて。
「失礼しました。」
再びその言葉と共に彼は教室を出て行って。
つかんだ腕はただだらりとその場に落ちて。
見上げた喜八郎の表情は、ただ、うつろだった。
ごめんなさい
まるで、見えないのに泣いているみたいだった
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