ドリーム小説
記憶を辿って44 君の言葉に救われる
「ありがとう、先輩」
そう言って笑った君の顔は晴れ晴れしくて、そして微かに赤い瞳をしていた
「先輩」
後ろからの衝撃と共に聞いたことのある声。
それは背中にじわり、広がって。
ぎゅ、とひときわ強く抱きしめられたと思えばそっと離れて行った熱。
そっと振り返れば晴れ晴れしいきり丸の顔。
「ありがとう、先輩」
正面に回ったと思えば再びぎゅう、と抱きしめられて。
「金吾が、思い出してくれた。」
高い背を微かに曲げて、の肩にその額をあてて。
振り絞るような声は、ひどく胸を突く。
「金吾だけじゃなくて、団蔵も俺のこと知ってるって___」
あまりにも温かなその声。
泣きだしそうに震えた声。
それはきり丸の言葉を如実にあらわしていて。
「ありがとう」
そう言って離れたきり丸はにかり、微かに赤い瞳で笑った。
「先輩があの時ああいってくれなかったら、俺は今、ここでこうやって笑えてない。」
太陽みたいに眩しい笑み
「まだ思い出してない人もたくさんいるけれど、それでも俺はまだ頑張れる。」
向日葵みたいに温かな笑み
「ありがとう」
あまりにもまっすぐな言葉達
ほとり
瞳から滴が溢れた
「ちょ、先輩?!」
ほろりほろり
ただ透明なそれはほおを伝って地面へと落ちる。
その雫がの心の闇を溶かしていく。
”共に生きたい”
あの時きり丸に発した言葉はすべて本物で
の嘘いつわりのない気持ちで。
どうして、迷ってしまっていたんだろうか。
彼の笑みに、言葉に、は再び助けられた。
「先輩、俺に会うたんびに泣いてません?」
以前と同じように、不器用にきり丸は自分の腕での眼をこすって。
「 ありがとう、きり丸。」
その温かさに、楽しそうな笑みに。
心の底から感謝を述べた。
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