ドリーム小説
記憶を辿って46 君が発した言葉
教師の朗々とした声が教室に響く。
その穏やかな声はゆっくりと生徒たちを眠りの世界へと引き込んでいく。
生徒の一人、も例外ではなく。
襲い来る眠気に抵抗しながら、そっと窓の外に視線を向けた。
(あ、)
外にいたのは見知った彼。
体育の時間なのだろう。
体操服に身を包みながら、あっちへふらふら、こっちへふらふらしてクラスメイトであろう人たちに引っ張りなおされてる。
その、場所は___
頭に浮かんだ言葉に、じわり、目元が熱くなる。
わかってはいても、覚えていないことが、悲しい。
本当は心のどこかで期待していた。
彼らは出会えば記憶を思い出すと。
だって、かつてはあんなにも共にいた。
きっと、見れば思い出す。
そんな淡い期待を持っていて。
窓の外の君は、けたけたとクラスメイトと笑いあっていて。
それはあの時と変わらぬ笑みで。
あの時とは違う 手を伸ばせば届く距離
あの時とは違う 共にいることを許される関係
けれども、その距離を作れるほど強くもなく。
ふ、と泣きそうになった瞳を一度閉じて。
そして、黒板に目を戻すためそっと視線を外そうとした瞬間
目が、あった。
大きなくりくりとした目。
それが距離があるというのにまっすぐとを射抜いていて。
きょとん、と一時考えるようなそぶりを見せた後、彼はふわり笑った。
両手を振り上げて、楽しそうに手を振って。
「 」
聞こえない声は、口の動きだけであったけれど確かにの名を呼んで。
大きく手を振る左門にクラスメイト達がよってきて、頭をしばいた。
痛そうに縮こまる左門に笑いながら去っていくクラスメイト達。
ほほえましいその光景に、先ほどとは違い笑みがこぼれた。
集合がかかったのだろう。
走って行ったクラスメイト達を追いかけるため左門が立ち上がる。
そして
そっと、手を下して
眉を悲しげにさげて
その瞳の奥、こらえきれぬような痛みを秘めて。
「 た す け て 」
そう呟いた。
動いた唇が形作ったのは___
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