ドリーム小説
記憶を辿って47 お前らと一緒に
自分でも可笑しいとは思ったんだ。
転校してきたばかりで、何もわからないはずの彼女にそれを求めるのは。
それでも、彼女ならば何とかしてくれるって。
この宙ぶらりんな、どうしようもない、どうしようもできないこの状態を打破してくれるのは。
体育の授業中。
勝手に違う方向に言ってしまう僕の体を、慌てて捕まえてくれるクラスメイト達。
捕まえられる体に思わず、わかっているのに期待する。
そんなこと、ないって、しってるのに、な。
ぎゅう、と痛む胸を知らないふりして。
今この時に友とよべる友人たちと共に課された課題をこなしていて。
あの頃の自分がどのように動けていたか、それをよく覚えているから違和感はたくさんある。
けど、それでも、いまここにいるのは僕で、それ以外の何物でもないから。
ふいに感じた視線。
見上げた窓に見えたのは、あのまっすぐな瞳。
それはただ、ぼおっと僕を見下ろしていて。
微かに潤んでるように見えたのは気のせいなのだろうか。
それでも、揺れる瞳は間違いじゃないと感じて。
目があったことに、少し迷った瞳。
なんだかその様が、記憶の中で幾度か見た彼女と変わらないものだということに、
素直に嬉しいと感じたんだ。
零れた笑みを君が驚いたような表情で見る。
そんな些細なことなのに、なんだかとても嬉しくなって、思わず手を振った。
「何してんだよ、神崎!」
ぱしり、僕の頭に、衝撃。
そっちこそ、なにするんだと思わず言い返して。
わーわー叫びながら逃げていくクラスメイトに思わず笑う。
走っていく皆を追いかけるために一歩進んで、そしてもう一度あらためて彼女を見る。
今のこの時も、すごく楽しくはあるけれど
きょとんとした表情の君を見た瞬間。
思わず、口が勝手に動いていたんだ。
「 」
彼女が僕の口の動きに気づいた。
微かにいぶかしむような彼女に、どうしようもない気持ちがこみ上げる。
たりない
「 た す け て 」
たりないんだ。
みんなが
だから、望んだ。
記憶を有している君に。
たすけてほしいと
ただ、それだけ。
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