ドリーム小説





記憶を辿って49  今私が望むのは


















「伊賀崎君」

以前と逆。

席に座ったままの孫兵の前にそっと立つ。

その綺麗な瞳をこちらに向けるためにその名を呼んで

向けられたその胡乱気な視線に少し、笑う。


「・・・何。」


促す言葉。

それにそっと言葉を吐き出した。


「私は、あきらめるつもりはないの。」


まっすぐにを見つめるその瞳。

それはそらされることなくを映す。


言葉を伝えるのを、怖いと感じた。

けれども、口にしなければ伝わらないし、わからない。



そう、あの左門のように。

いつもいつも、笑みを見せてたのに、あの時初めてそれ以上の感情を見た。

左門が覚えているのかどうかは、わからない。

それでも、彼が変化を求めていることだけはわかったから。

だから私は




「あなたが不変を望んでも、私は変化を求めるの。」



今生きている私は、私だけのもの。

誰かに何かを強制させられること、これからたくさんあるとは思う。

でも、それは今じゃなくてもいいはずだ。


「今はあの頃と違う、それは確かだけど、あの頃と違って自由だわ。あの頃と違って、皆と生きれるの。」


皆で一緒に花見をしたり、

皆で一緒に買い物をしたり、

皆で一緒に駆けまわったり、



皆と一緒に笑いあったり




「私は今、この世界で皆と一緒に生きたい。」





皆で、共に、






心の底からの想いを、の今の精一杯で伝える。

それに、孫兵は小さなため息をこぼして。

外された目線に、思っていた以上に体がこわばっていたことを知る。

そっと、少しだけ体を緩和させて目の前の彼を見つめ続ける。



「・・・好きにしなよ。」


再び小さなため息と共に発された言葉はそんなもので。


「それでも、覚えていて。」



ゆっくりと、再びあった目は先ほどよりもずっとずっと強い意志を秘めていて。



「僕は手を出すつもりはない。それから、思い出すことを望んでる人ばかりじゃないこと。」



それは忠告。


思い出させることを、望むのに、その代償は大きくあると。


それは優しい忠告。


想いどうりに行くはずはない、と。




小さな彼の想いに心が温かくなった。




















※※※※※
孫兵との衝突はこれで一応和解。
孫兵との和解は。
といっても孫兵は手を出さないです。








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