ドリーム小説
記憶を辿って 5 たった一人の共有者
アルバイトの手伝いを少しだけした。
記憶の中での私と彼の接触はそれくらいだったけれど
「きり、まるくん・・・」
紺に近い色の髪
それがふわりとゆれたと思ったらこちらに向けられた瞳。
釣り上ったそれは鋭い中に美しさを秘めていて
学園の敷地内をふらりふらりあてもなくさまよっていれば出会った少年。
彼は以前と大差ない姿のままそこにいた。
微かに、いぶかしむようにひそめられた瞳。
そのあとに言われるであろう言葉はわかっていたけれども。
それでも、呼ばずには居られなかった。
ゆるり、一度その目が揺れて、私を映したその目は大きく見開かれて。
「、先輩・・・?」
その口から洩れたのは私の名前。
それに感情が決壊するように零れだした。
「ほんとに、きりまる、くん?」
恐る恐る再びその存在を確かめるように名を呼べばふにゃり、苦笑。
「そうっすよ。先輩こそ、先輩であってますよね?」
確かめるように、鋭いまなざしがを突く。
こくん
一度頷くために顔を下に向ければ、ぽとり
大粒の雫が地面に落ちた。
「あ、れ、?」
それは次から次へと。
まるで止まることなど知らないように。
ぼとぼととしみを増やしていく地面に、焦りがこみあげて。
「何、やってんすか・・・」
呆れたような声の後、ぐい、と腕をひかれる。
それによろけて顔をあげれば、仕方がなさそうに、申し訳なさそうに綺麗な顔をゆがめるきり丸がいて。
ぐいぐいとの顔に自分の腕を押し付けてくる、
そんな不器用さに、今度は笑いがこみ上げて来て。
「今度は笑ってるんですか?」
くすくすと笑い声をあげれば再び呆れた声。
「私の記憶は、間違いじゃないんだね?」
確かめるようにかみしめるように言葉をはっせれば最後にもう一度、ぐいと目元をぬぐわれて。
開けた視界に彼のまっすぐな瞳。
「俺も持ってます。俺の記憶は本物だと信じてますよ。」
あんまりにも堂々と告げるものだから、の心の中、蹲っていた何かがすっ、と消えて行くのを感じた。
「私はおかしくないよね?」
「俺はおかしくないっすよ。」
ならば、ならば、
「私は皆に、思い出してほしいと思う。」
まっすぐと、きり丸の瞳を見返しながら言った言葉に彼は驚きをあらわにして。
「今はもうあのときとは違うんだよ。共に、生きれるんだ。」
あの時のように傷つけるだけの世界じゃ、ない。
そう発せられた言葉に、一度の間をおいた後にかり、笑った。
「俺も、乱太郎たちに思い出してほしい。あの時をもう一度。あの仲間と、今度は共に生きて行きたい」
晴れ渡った蒼い空のように眩しい笑みできり丸はそう告げた。
「できるかな?」
そっと、尋ねるように返したにきり丸は楽しそうに返した。
「俺たちを誰だと思ってるんですか?」
その不敵な笑みは彼らの絆の強さを感じさせて
「あの、は組ですよ?」
入学してから卒業するまで誰一人として欠けることのなかった奇跡のは組。
その一言で、心が決まった。
「俺たちは組を舐めないでください」
絶対に思い出させよう
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