ドリーム小説








記憶を辿って6 奇跡の


















俺を見て、びくりと体を震わせた。

そのおっきな目がこぼれんばかりに大きくなって、そうして小さくその口が俺の名を形どった。


「なんで、」

なんで知ってんの?


そう言うために開かれた俺の口はおそらく間抜けに開いていただろう。

ざあ、風と同時に頭の中に吹き抜けたかけらはあらたな記憶として脳裏に刻み込まれた。

くのいちと忍たま。

もともと隔たりがあって。

さらにいえばまったくもって仲がよかったとかそんなんじゃないけれど、

でも、一度だけ、アルバイトを手伝ってもらった。

たったそれだけ。

だから驚いたんだ。

あなたが記憶を有していることを。


、先輩・・・?」


おっきな瞳がこれでもかというくらい見開かれて。

ふるり、その唇が揺れた。

「ほんとに、きりまる、くん?」

確かめるようにつぶやかれた俺の名前。

それは、ただ、今初めて会った、それだけの意味ではなくて。

恐る恐る、その言葉がとても似合う。

怖い怖いと全身で述べておきながら、真実を見据えようとするその瞳は、嫌いじゃない。

「そうっすよ。先輩こそ、片岡先輩であってますよね?」

ふ、と苦笑と共に答える

それにこくり、頭を肯定の意味でふった瞬間、ぼたり、地面におっきなしみができて。

微かに驚いた俺よりも、なぜか先輩が焦りだして。

あわあわとどうしようと身悶える姿に笑いがこみ上げるのをかくしながらその腕を掴んで引き寄せる。

驚いて顔をあげた先輩の視線を遮るように腕で顔を拭えばくぐもった声。

かと思えば突然笑い出したりして。

「今度は笑ってるんですか?」

呆れた、という思いを込めてそう言えば、今度はしっかりとした声。


「私の記憶は、間違いじゃないんだね?」

最後にもう一度その目元を強くぬぐって、そして、見たその顔。

微かに赤らむその瞳。

でも、奥に宿る強き意志。

信じよう、そう思えた。


「俺も持ってます。俺の記憶は本物だと信じてますよ。」


そう告げた瞬間の彼女の笑みは、いままでの誰のものよりも美しいとそう思えた。



「私はおかしくないよね?」

「俺はおかしくないっすよ。」


再確認のようなそれに返事を返せば、ならば、と募られて



「私は皆に、思い出してほしいと思う。」

それには驚いた。

だって、それは彼らにあの記憶を。

人を手に掛けた記憶を思い出させるということで。


それはあまりにも、過酷で恐ろしくて、怖くて


「今はもうあのときとは違うんだよ。共に、生きれるんだ。」


かぶせられるように放たれた言葉に、一瞬言葉を失った。

走馬灯のように思い出されるのはつらいだけの記憶ではなくて


純粋に思った。


皆に思い出してほしい、と。

かけてみようか、この人に。


「俺も、乱太郎たちに思い出してほしい。あの時をもう一度。あの仲間と、今度は共に生きて行きたい」


それに、泣きそうにあなたは笑って。


「できるかな?」


尋ねるよなそれに、笑って返した


「俺たちを誰だと思ってるんですか?」

「あの、は組ですよ?」

入学してから卒業するまで誰一人として欠けることのなかった奇跡のは組。

そう言われ続けた俺たちのきずなは半端なものじゃないと信じている。




「俺たちは組を舐めないでください」




絶対に思い出させるから











※※※
そんな風に呼ばれてるといいな。





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