ドリーム小説
記憶を辿って52 迷子の遭遇
「あ!」
「あ?」
たまたまお昼が一緒になったので日向ぼっこをしながらと二人でご飯を食べていた。
が、それは放送で彼女が呼び出されたことによって一人での昼ごはんの時間へと変わって。
隣に人がいないことへの物足りなさを感じながら、食べ終わったパンの包みをゴミ箱へと投げ捨てた。
と、
「わ!なんだ?!」
それは目的のゴミ箱を大きく外れて近くの茂みへと到達した。
誰もいなかったはずのそこから聞こえてきた慌てた声。
「あれ?すまん、誰かいたのか。」
がさりと目の前の茂みが揺れて、そして現れたのは見たことのない奴。
・・・見たことのなかったはずのやつ。
「あ!」
「あ?」
そう、見たことはなかったはずなのに、そいつにあって、目があって、微かに上がった声に、
体中に電撃が走ったような感覚になった。
あれ、俺、こいつ知ってるわ。
頭に浮かんだのはそんな単純なこと。
にぱり
笑うその顔も、
さらさらな髪も
その声も
「久しぶり、左門」
気づいたら出てた言葉。
そう、俺は名前だって知ってた。
「おう!久しぶりだな、三之助!」
楽しそうに嬉しそうに、左門はあの頃と変わらない笑みで俺の名前をよんだ。
これ、か。
ずっと、くすぶってた原因不明の何か。
ずっと、探していた、何かわからない何か。
それは、左門のことで、
左門のことだけじゃなくて、
みんなのことで。
左門のことを思い出した瞬間、あふれ出るように記憶として生れ出るたくさんのもの。
厳しい先生
頼れる先輩
可愛い後輩
大事な仲間達
迷子の俺たち。
探しに来てくれる作。
忍びとして生きた前の世界。
闇色に染まっていった俺たち
赤く染まるこの手。
でも、それらすべてを、なぜかあっさりと理解して、享受して。
そして、気づいた。
「・・・左門」
目の前の左門が、ぼろぼろと涙をこぼしながら笑っていることに。
「左門」
もう一回名前を呼べば、その顔はようやっと泣き顔にふさわしい顔になって。
ぼろぼろぼろぼろ
みっともないくらいにその大きな眼から涙をながして。
「さん、の、すけ、」
「なんだ?」
「さんの、すけ。」
「・・・うん。」
「さんのすけええ!!」
「うわ、」
ぼろぼろぼろぼろ
顔面を涙やらなんやらでぐしゃぐしゃにして、左門は相も変わらず小さな体で俺に飛びついてきた。
「さんのすけ、のばか、やろう!!なんで、すぐおもい、ださなかったんだ、よ!」
とぎれとぎれで訴える言葉の端々に、さみしかったという意味が込められていて。
こう見えて、あまえたがりのこいつだから、ずっとずっと一人で、さみしくてたまらなかったんだろう。
さみしくてたまらなくて、それでも、それを誰に言うこともできなくて。
「ごめん、」
その頭に手を載せて、ぐしゃぐしゃにかき回して、笑う。
「でも、もう思い出したから忘れねえよ。」
それに左門はまた、嬉しそうに笑った
※※※※※※
夢主の預かり知らぬところで思い出すというね。
さてさて、ひとまず。
二人を会わせたかったので満足です。
・・・夢主が走り回るよ、ってつもりだったのに、あんまり夢主何もしてないっていうね。
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