ドリーム小説





記憶を辿って57    僕と不運と時々迷子

















「・・・またこけたのか?数馬。」

学校帰り。

教室で目があったが曖昧に笑いかけてくるのをさらりと流して

「僕の家はあっちだ!」

「俺もこっち。」

なぜか仲良くなっていた方向音痴コンビを見送り

(お約束のように正反対の方向へ向かっていったのは見ないふりをした。)

自宅への帰り道の途中。

見事なまでのスライングを見せる彼を見つけてしまった。

残念ながら自分の進行方向先に彼がいることで、彼を無視するのは不可能で。

はあ、とため息をつきながら数馬の前に立ち手を差し出してやる。

その差し出された手をきょとりと首を傾げてみて、そしてその腕を辿って僕の顔にたどり着く。

そして一瞬の間。

「・・・!孫兵っ、」

みられていたのが恥ずかしかったのか、一瞬で真っ赤にゆであがる顔。

そんなに恥ずかしがらなくてもそんな姿見慣れているのに。


「ごめん、ありがとう。」


僕の手を取って立ちあがって、ふにゃり、申し訳なさそうに笑う。


「僕いつもこんな風によくこけちゃうんだ・・・」


笑っているのに泣きそう。

そんな表情をもう見ていたくはなくて。


「ずっと昔から知ってるし、もう慣れたよ。」


ぽろり、その涙を止めたい、そう思った瞬間零れた言葉。

驚いたのは数馬よりもむしろ自分で。


「ありがとう」


それでもふわり笑った数馬に助けられた。













なあ、

あんなにも否定していたけれど、あんなにも手を出さないと言いきったけど、



少しだけ期待してもいいだろうか。







教室を出るとき、君を知らないふりをしたことに、いまさらながらに胸が痛んだ








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