ドリーム小説
記憶を辿って58 さらり揺れる黒髪
さらり
綺麗な黒髪が風に揺れる。
柔らかな日差しが、彼の美しさを際立たせていて。
見つけたその人は、風に揺れる髪をそのままに、
その美しき眼を微かに眇めて、懐かしそうに笑った。
「相も変わらず、うまいものだ。」
あの時よりもずっとずっと、穏やかに笑って、
そう言った目線の先には___
それを見た瞬間、体が動き出した。
早く早く、急かしてせかして。
求める人をただ探しに走った。
どこにいるの、どこに___
走って走って、あの時のように、風のように走った。
ふわり
目の端をかすめた銀色の影。
慌てて足を方向転換。
見つけた彼の、手をつかんだ
「?」
「来てっ!」
ただ、そう叫ぶだけで精いっぱいだった。
走って戻ったそこ、まだ、彼はそこにいて。
隣で大きく息をのむ気配。
咄嗟に連れてきたのはいいけれど、自体も動けなくて。
音に気付いたのか、それとも気配を悟ったのか。
すっと、振り向いた彼は、その瞳に喜八郎を映して
「きはち、ろう・・・?」
声をあげた。
それだけで十分だった。
「仙蔵先輩っ、」
よこの影はをすり抜けて、ただ、彼へと一直線に駆ける。
飛びかかって行ったその体を仙蔵は何のためらいもなく、抱きしめて。
「久しぶりだな」
始めてこの世界で彼の本当の笑みを見た
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