ドリーム小説





記憶を辿って63   おいていかれた迷子
















とある休み時間。

担任に頼まれて職員室に資料を持って行った帰り。

その帰り道。


見つけたのは無言でたたずみ見つめ合う二つの影であった。



「なあ、ここはどこだ?」

「・・・は?」


見つめ合う、というと間違いが生じる。

正確には一人の少年の行く先を遮るようにして立っている少年と、その遮られている少年だ。



「あ、違うな。僕の教室はどこだ?」

「はあ?!」



会話はまるで一方通行。

矢印は確かにお互いに向かっているのに、どこかで直角に折れ曲がったかのように話がずれている。



この世界で初めて見たその組み合わせ。

それはなんら違和感なくそこに存在していて。



遮っている少年である左門は、目の前の少年作兵衛にここはどこだと再度尋ねた。

その答えがわからないのではなく、その質問の意味が理解できない作兵衛は怪訝な反応を見せていて。



が声をかければ問題なく事が進むことはわかっていた。

それでも、その場所にが入るのは間違っているような気がして。


そこには見えない壁があった


「お前いったい何だ?」

「ん?神崎左門だ!」


見当違いな二人組。


「・・・一体何がしたいんだ?」

「教室に戻りたいだけだが?」


いまにも彼らのその口から、 左門 と 作 と。

お互いの名を呼んで笑いあって


「帰ればいいじゃないか。」

「だから何処にあるんだ?」



そうなるんじゃないかと



「っいい加減にしろ!!」




  錯覚を起こしそうになった。




廊下に響いた怒鳴り声は、キイン、との耳にも衝撃をもたらして。

至近距離であった左門は耳を押さえながら目をちかちかさせている。



「さっさと戻りたいなら戻ればいいだろうが!わけのわからないことに俺を巻き込むんじゃねえ!」



道を遮るように立っていた左門の肩に手を置いてその小さな体を押した。

どん、と重い音と共に作兵衛は憤りをあらわにその場所から姿を消して。



残ったのは、未だに残る耳の痛みと


ぽつり、おいてかれた迷子だった。








その後ろ姿にかける言葉を見つけることはできなくて






















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