ドリーム小説
記憶を辿って65 その人の名は
この人はこの時代でもこの名を背負っているのか
コンビニで見つけた新製品。
それを袋に入れたままがさがさと歩いていたのが悪かったのか。
飲み物を取り出そうと袋の中に視線を向けて歩いていれば走った衝撃。
の体は地面とご対面。
「すまない。大丈夫か?」
一瞬何が起こったのかと驚きで目を瞬かせていれば
そっと目の前に差し出される色白の手。
それを辿って腕、首、顔、と視線を上げていけば、心配そうにこちらを覗き込む一対の瞳。
長いまつげに彩られる強いまなざしはを映す。
「大丈夫、です。」
いつの間にか掴まれて立たされていた。
はたはたと彼の手がの服をたたいてついていた砂などを落とす。
その様はまるで子供に接するようだ。
「怪我はしてないな?」
確かめるように問われた言葉にこくりと頷いて、地面に散らばっていた袋の中身に目をやる。
「こっちもすまなかった。何なら同じのを買ってくる・・・」
同じようにそれらに目をやった彼の言葉が途中で止まった。
その視線はある一点で止まっていて。
『新発売!豆腐ポッキー!』
そのお菓子から彼の眼はぶれない。
動かない
眼見している。
間違いなく彼が誰なのか、予感が確信に変わった瞬間だった。
「・・・」
「・・・」
どうしようかと考えあぐねていた。
彼らの空気を破ったのは新たな人物であった。
「お〜い。久々知!何してんだ?」
ひょこり
頭にたくさんの葉をつけて現れたのは銀色の髪をぼさぼさにした人物。
の記憶の中にも存在する人物によく似た彼は、の目の前の人物に向かってそう言った。
久々知
その名前に、の記憶は間違いでなかったことを知り
その呼び方に、やはりと落胆を覚えた。
「・・・竹谷か。」
ちらり、一度だけ八左エ門に目を向けて、そしてすぐさま視線は戻る。
「ん?」
そんな彼に苦笑して、そしてようやっとに気がついたように目を向けた。
「・・・」
「・・・」
先ほどと同じ見つめ合い。
本格的にどうしようかとが固まっていれば
にかり
太陽みたいに眩しい笑みが八左エ門の顔にあふれた。
「高等部2年の竹谷八左エ門!よろしくな!」
「え、あ、中等部3年の、です。」
差し出された手を反射的に握り返せば満面の笑みと共に上下に振られる。
「俺は久々知兵助。」
がくんがくんと来る衝撃に目をまわしていればさらり、流された名前。
ぐるぐるする頭でそちらを見ればお菓子のパッケージを手に持ちながら視線をこちらに向けている兵助がいた。
「知り合いじゃなかったのか?」
きょとん、とした八左エ門が問う。
「さっきそこでぶつかってしまってな。」
他にも散らばっていたものをあつめて袋に入れてへと差し出した。
「すまなかったな。」
その言葉はぜひとも手の中のお菓子を返してから言ってほしかった。
「久々知。その菓子ものだろうが・・・。」
相も変わらずこの人は白い豆腐が好きなようで
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