ドリーム小説





記憶を辿って72   間違えるな










不幸、だと?

ふざけるな。

僕が傍にいるのに乱太郎が不幸なわけないだろうが!

乱太郎はただ不運なだけだ、仕方がないだろう!

保健委員会を立派に六年間勤め上げたんだから!



そこまで考えが及んで違和感に気がつく



保健委員って何だ?



自問自答すれど、その答えはすでに知っていて。




忍術学園の委員会の一つ。

不運な生徒が入るという委員会。



あ、れ・・・

知らないはずのそれはあっけなく、記憶として僕の中にあった。

それは静かに、気がつけば降り積もっていた雪のよう。

ふわりふわり

気づけばそこにあったそれは、それでもそこにあるのが当然なもので。


1年は組の仲間たちのことも

僕がよく仕掛けていたからくりのことも

委員会での先輩たちのことも



僕がこの世界から消えていなくなる瞬間のことも



記憶としてそこに存在していた。


「・・・違うよ。」


ポロリこぼれた言葉。

聞きかえす乱太郎のまっすぐな目が、僕を見る。


「・・・兵太夫?」


それはたしかに僕の名前。


「違うだろう?乱太郎。」


溢れだしそうになる言葉を、こらえるのが苦しくて。


「乱太郎は不幸じゃなくて、不運だろ。」


その言葉を言うのが精一杯だった。


「ね、しんべエ。」







懐かしい友人と共に、そっと記憶の扉を開けた。












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