ドリーム小説
記憶を辿って79 せんぱい
「団子もらうよ。」
「ちょ、それ俺のだから!!」
学校帰り。
ずっと望んでいた光景がそこにはあった。
ずっと夢見ていて、だけど、叶うことがないと思っていたそれら。
でも、それは予想に反して現実としてそこに存在していて。
ふわりふわり
あったかい空間
きり丸が、照れくさそうに、でもすごくうれしそうに笑うもんだから、俺も嬉しくてたまらなくて。
「金吾〜」
ふにゃふにゃ、あの時と変わらない喜三太は本当に嬉しそうに笑っていて。
「もう、なめくじはもってないんだな。」
「ううん。おうちにいるよ〜」
その答えに、思わず笑う。
変わらぬ皆があまりにも、眩しくて。
相も変わらず泣き虫な自分も、なんだか認められるような気がして。
ふ、とそらした視線の先。
ふわふわ、さわり心地のよさそうな白い髪。
ほてほてと、それでもリズムを踏むように歩くのに、音はしない。
柔らかな日差しに目を細めて、そしてそっと俯く。
その姿は、記憶の中の___
「しろ、先輩・・・?」
思わずつぶやいたそれに、小さな小さな声だったのにもかかわらず、
まっすぐな射抜くような視線が向けられる。
「きんご・・・?」
かぱりと開いたままの口がゆっくりと俺の名前を形度った。
「え、あ、金吾??」
驚いたような喜三太の声を置き去りに走り出す。
ふにゃり、微笑んだ笑み。
あの頃、委員会で遅れてばっかりだった俺の手を引っ張って行ってくれていた優しい手。
手を伸ばせば、そっと感じるぬくもり。
「しろせんぱっ、」
溢れる涙をそのままに、ぎゅうと、力を込めて抱きつけば、小さな体でも危なげなく俺を抱きしめ返してくれる温もり。
「相変わらず金吾は泣き虫だね。」
ほてほてと優しく頭をなでられる。
「、しろ、先輩も、お変わりなくっ」
呼吸を必死で整えるように声を発していれば、後ろから走ってくる気配。
「金吾どうしたの?」
一番に俺の元に来るのは足が速い乱太郎。
「金吾、いきなりはしりださないでよぅ・・・」
ほへほへと呼吸を荒くするのは喜三太で。
「・・・金吾、突然人に抱きつくのはどうかと・・・」
団蔵がそうっと意見するように。
「・・・ていうか、時友先輩?」
ようやっと気づいたのは兵太夫。
「あ、本当だ。久しぶりっす。先輩。」
しんべエに付き添いながらワンテンポ遅くきり丸が。
「まってよ、皆・・・!」
息も絶え絶えなしんべエ。
「え?え、え?」
きょろりと視線をさまよわせてしろ先輩が首をかしげた。
「皆、覚えてるの?」
不思議そうに、少しだけ驚いたように。
「覚えてたり、思い出したり、とかですかね。」
きり丸の返事に、一度大きく目を開いて、
そしてしろ先輩がほわり、陽だまりみたいに笑った。
「さすが、は組だねえ。」
ほけほけと能天気にも見える笑み。
でも、でも
「僕も、三郎次とかに、思い出してほしいなあ。」
小さな小さな願いのようにぽつり、こぼされた言葉。
「じゃあ、思い出してもらいましょう!」
反応するのは俺たちみんな。
だってだって、もう一度皆で笑いあいたい。
その中には先輩たちだって含まれてるんだ。
「俺たちの手で思い出してもらいましょうよ。」
にししととても悪い顔で笑ったきり丸を見て、
しろ先輩と笑いあった。
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