ドリーム小説





記憶を辿って85   それはあっけなく理解できて 














知りたい、っていうよりも、知らなきゃって。


そう思ったんだ。









  この世界に生まれ落ちる前に共に生きていたんだよ



それを聞いた瞬間。

俺の中の不可解な感情はすとん、と終息して。

ああ、だからか、って納得できた



一つ話が進むたびに、ああ、知ってる。

そんな感情がこみ上げる。

思い出したんじゃ、ない。

知っていたんだ。

そう、たぶん、どっかで知ってた。


魂の記憶?とか、そんな難しいこと俺には分からないけれど。


でも、知ってる。



迷いくせのあるくせにおおざっぱな雷蔵とか、

悪戯が大好きで雷蔵をまねていた三郎とか、

白い豆腐が大好きで優秀だった兵助とか、

大食らいで天然が少し入っていた勘右衛門とか


それから、生物委員として後輩たちに囲まれていた、俺とか。


可愛い後輩たち

逞しい先輩方


避けることのできなかった別れ

この手に掛けた様々なもの



赤い色


「八左衛門・・・」

勘右衛門の語る声が止まって、心配そうに俺を覗き込んでくる。


ぼとぼとぼとぼとと、さっきのみたいに溢れだす感情は、雫となって。


「ごめん、遅くなって。ごめんな、勘右衛門。」


ああ、痛い。


胸が痛い。


自分が忘れていたことよりも、自分が忘れていたことによって、三郎が、勘右衛門が、どんな思いを抱いたのか。



それが、怖くていたい。



「ばっかだなあ。はっちゃんは。」



その笑顔に救われるのは幾度目だろう。


過去、記憶の中で何度も何度も、救ってくれた彼は、今この世界でも俺を優しく許してくれて。





もう一人、この場にいる者の名前を呼べば、ぎくり、彼女はなぜか体を揺らして。

俺は、過去のという人物を、はっきりいって知らない。

くのいち教室の子たちを避けていたというよりも、実際問題会わなかったから。


でも、それでも、


、お前に言いたい



「勘右衛門のそばにいてくれてありがとう。」


たったひとりでこいつが潰れていくことなかったのは、お前が手を差し伸べたから。



「思い出させてくれてありがとう。」



俺が皆を思い出せたのは、お前が声をあげてくれたから。



その言葉には、先ほどと違う意味の涙を流して、笑った。



「俺も、あとのみんなに思い出してほしい。」



そして俺のそんな言葉に、首がもげるんじゃないかというほど頷いてくれた。




















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