ドリーム小説





記憶を辿って88 望むのは、不変
















目の前には黒髪。

ふわり、綺麗なそれは風に揺れて。


まっすぐな意志の強い眼が、俺を射抜く。



今日は本当によく会う。


いらりとした感情をそのままに、それとすれ違う。




「・・・なあ。」



話しかけられることなど、想像していなかったから。


ぎくりと体が震えるのがわかった。


そのまま聞こえなかったふりでその場所を通り過ぎようとすれば、なぜか彼は俺の制服を掴んでいて。


「・・・なんだ。」


いらだちと、困惑で、首だけ振り向いて尋ねれば、じいっと俺を見る黒い瞳。


それは強く、俺を浸食する。


こいつは、いったい何がしたい。

あの時と一緒でこいつの行動はたまに意味がわからない。



「・・・うん。」

ひとりつぶやき、納得したかのように頷く。


「なんだよ。」

行動の真意がわからずに怪訝そうな顔で見ていればその目とまたあう。



「あんたが、鉢屋三郎か。」


疑問でないそれは、確信。


女にしては長い睫毛がゆるりと瞬きする。


「俺は久々知兵助。覚えておけ。」

意味がわからないままその顔を見つめ続ければ、微かにその顔がゆるむ。


「俺はたぶんどっかで鉢屋に会ったことがあるようだ。」



じゃあな、それだけいうと兵助は俺の前から姿を消して。





「なんだよいったい。」




俺はもう、変化を望みたくないのに、いったいなんなんだよ。























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