ドリーム小説



記憶を辿って95  夢の箱











目の前で展開される、不思議な光景。




彼らのいってる意味が、正直言って意味がわからない、



でも、目の前の久々知が笑っているのを見ると、嬉しくなる

竹谷のそのしょうがないなあとでもいいそうな笑みにほっとするし

尾浜が泣いているのに今まで見た中で一番いい顔をしてるのを見て安心したし



意味がわからないのに、この胸からどうしようもない感情が溢れる。




ああ、そして何よりも、目の前で泣きそうに笑う、君が、どうしようもなく、悲しくて。



三人を通り越して、一歩、また一歩。

近づく。


髪の綺麗な先輩が、あの時僕を見て「三郎先輩は?」と尋ねてきた少女をそっと前に押し出して。

ぐっと、その綺麗な姿勢が、空気を変えていく。


まっすぐに、その先に、鉢屋三郎という人物が、その視線を恐れるように立っていて。




「三郎先輩。」


呼ばれた名前に、ゆらり、頭の中で何かが動く。


自分で開けることがかなわなかった、夢の箱が。



「私はやっぱり思い出してほしいんです。」



かたりと音を立てて、外に出たいと叫ぶように。




「不破先輩にも。」



不意に発せられた自分の名前に、驚きながらもその言葉の先を待つ。




「じゃないと、三郎先輩が壊れてしまいます。」




それは、だめだ




漠然と思ったのはそれだけ。



この人が壊れてしまうのは、いけない。





「あなたは不破雷蔵と一緒にしか生きれないでしょう?」








かたり




ゆっくりと、開かなかった箱が、動いた。















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