ドリーム小説
記憶を辿って96 はやく、気づいて
あの頃の記憶は、未だに自分を蝕むけれど
それは決してマイナスだけのものじゃない。
それを早くわかってほしいんだ
「三郎先輩。」
名前を呼んだ瞬間、ゆっくりと変化していく気配
「私はやっぱり思い出してほしいんです。」
その痛みを、いつまで抱えていかなくてはいけないのですか
「不破先輩にも。」
だって、すぐそばにいるんです。
「じゃないと、三郎先輩が壊れてしまいます。」
その言葉を発した瞬間、目の前の三郎から笑みは消えて。
変わりに立ち上る、今までの中でも最上級の怒りの気配。
「だから、なんだ!?」
もう今までの何もかもを取り繕うのをやめたように、
ただ、子供の癇癪を起したかのように、叫ぶ、叫ぶ。
その怒りは、でも、何よりも悲しくて。
まっすぐに見つめるその瞳が揺れていて
「俺はもう、このままでいいんだ!!!」
自分に言い聞かすように。
これ以上を望むなと、これ以上を求めるなと。
そんなこと、もうしなくてもいいのに。
「頼むからっ、もうっ、いらないことをしないでくれっ!!」
本当に、叫ぶように、逃げるように、
咎を、悔やむその声は、ひどくまっすぐで、胸に響く。
「俺はっ、一人で生きていける!!」
そんなことないのだと、叫ぼうと思ったのに。
その声は、別のもので遮られていた。
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